既に日は昇り、駅のホームにたつと正面に朝焼けが広がっていた。やましいことはないのだけれど、これは言わば朝帰りであって、会社や学校に向かう人々を尻目に、自分だけ帰路に着くというのは気分のいいものだった。一様に眠たそうで、皆、ぼんやりと前方約2メートルにある透明な何かを見ているような気がした。太陽が昇ってゆく様子には、誰も気づいていないようだった。一日は始まったばかりだった。