僕の下で

彼女はねだるように唇を差し出してきた。
僕は平静を装いつつ、その様子を黙ってみていた。
それでも彼女は、僕の気持ちを見透かしたかのように、何度も何度も唇を突き出してくる。
ーやれやれ、でももう少しだけ。


僕はそのまま軽くキスをして、再び彼女の様子を伺った。
ニヤリとした笑みが浮かぶ。
そして彼女は、最後にもう一度、唇を僕に向けた。


やれやれ、やっぱり彼女には叶わない。
どうやったって彼女には叶わない。
恋は落ちたほうが負けなのだ。
追いかけるほうが負けなのだ。


そうして僕は彼女に深く口付けた。
焦らしてしまった分、息継ぎが出来ないぐらいに、深く。
真綿で絞め殺すように、ゆっくりと。
彼女の期待に答える、従順な犬のように。