断片的な情報からでも推定することは容易で、その推定は大抵の場合当たっているものである。特に人間なんてものは案外単純なもので、その行動は本心を表しているか、本心を隠そうとしているかのいずれかしかなく、結局のところ、ある一つの行動の原理はひとつに過ぎない。思考を表現する手段は、文字以外においては至極簡単になりがちなのだ。しばらくすると、予想通り「それ」は近づいて来るのだけれど、あと2cmのところでひらりと身をかわし、無視を決め込む。すると「それ」はいつしか遠くへ行ってしまい、再び会うことはない。